将棋における囲いは、王将を守るための「城」のような役割を果たします。
その中でも、金無双(きんむそう)は、振り飛車戦法で使われることが多い、玉を金銀で左右に挟んだ形をした囲いのひとつです。
初心者でも組みやすく、構造が覚えやすいことから人気があります。
しかし、シンプルな構造であるがゆえに、「弱点は?」「崩されやすい?」といった疑問も多く、戦いの中で金無双をどう活かすかが勝敗を分けるカギとなります。
この記事では、金無双の基本形・手順・メリット・デメリット・崩し方・実戦例などをわかりやすく解説します。
将棋初心者の方から中級者まで、「囲い選び」に悩むすべての人に役立つ内容です。


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金無双とは?|シンプルで堅い将棋の囲い


金無双は、その名のとおり金将2枚を玉の左右に配置する囲いで、見た目のバランスの良さと構築のしやすさが特徴です。
特に振り飛車党のプレイヤーに愛用されてきた囲いでもあります。
ここでは金無双の名前の意味や由来、そして他の代表的な囲い(美濃囲いや矢倉など)との違いを解説します。
金無双の基本形と名前の由来
金無双とは、左右の金将を王の両サイドに配置し、玉の守りを固める囲いです。
「無双」とは、対になるものが存在しない、他に類を見ないほど優れているという意味を持ちます。
玉を金銀で左右に囲う美しさと、簡潔な形にその意味が表れているのかもしれません。
主に振り飛車戦法で使われ、美濃囲いや舟囲いよりもコンパクトに構えられる点で、早めの戦いに備えることができます。
玉を深く囲わないため、スピード感のある中盤戦にも対応しやすい囲いです。
振り飛車でよく使われる囲いの一つ
金無双は、振り飛車戦法で多く使われる囲いです。
特に、四間飛車や三間飛車といった振り飛車を選ぶプレイヤーが、素早く玉を囲いたいときに好まれます。
振り飛車では、自陣の右側に玉を寄せて守りを固める必要がありますが、金無双は金を2枚、銀を1枚上がるだけで形ができあがるため、短い手数で完成するのが大きな魅力です。
しかも、玉の位置が3八になることが多いため、急戦にも柔軟に対応できる点で評価されています。
ただし、玉の逃げ道が狭いことから柔軟性にやや欠けるという一面も持ち合わせています。
矢倉や美濃囲いとの違いとは?
金無双とよく比較される囲いに、「矢倉」と「美濃囲い」があります。
金無双は、矢倉ほどの堅さはありませんが、短手数で整う実戦向きの囲いです。
また、美濃囲いのように玉が端に寄らないため、中央からの攻撃にもある程度対応可能です。
一方で、金2枚、銀1枚のため、斜めの攻撃(角・銀による)にやや脆いという弱点があることも覚えておきましょう。
金無双の組み方と手順|図解でわかりやすく
金無双は比較的少ない手数で組める囲いのため、初心者にも取り組みやすいのが魅力です。
ここでは、先手・後手の両方の立場で金無双の基本的な組み方とポイントを紹介します。
基本形を目指す手順とポイント
金無双の基本形は、玉を3八に置き、金を左、銀を右に寄せる構えです。
以下に、先手で金無双を組む際の一般的な手順を示します。
◆先手での組み方(一例)


- ▲7六歩
- ▲6六歩(四間飛車を想定)
- ▲7八銀→▲6七銀
- ▲4八玉
- ▲5八金左
- ▲4八金右
- ▲2八銀
このように、金を2枚左、銀を右に玉の周囲に配置し構えを作るのが基本です。
金無双は銀将を前線に出して攻めに使いやすいので、攻撃的な振り飛車を志向するプレイヤーにとっては自然な囲い方といえます。
囲いを崩されにくくする駒の配置とは?
金無双は完成形自体はシンプルですが、相手の攻撃に耐えるための細かな工夫も必要です。
斜めからの角や銀の攻めを警戒するなら、歩の突き方や飛車の位置も調整しましょう。
- ▲6六歩(角道を止める)
- ▲5七角(角交換後に打たれやすい地点を守る)
- ▲7七桂(攻めと守り両方に参加)
これらの駒の配置を意識すると、金無双の弱点である斜め攻めのケアができ、囲いの耐久力を一段階高めることができます。
また、端攻めに対しては端歩の突き合いを早めに行っておくと安心です。
金無双のメリットとデメリット
金無双は、振り飛車党にとって有力な囲いの一つですが、すべての局面で万能というわけではありません。
ここでは、金無双の長所と短所を整理し、他の囲いとの比較も交えて解説します。
金無双のメリット|手数が少なく構築しやすい
金無双の最大のメリットは、組むのが簡単で早いことです。
- 玉を3八に移動
- 金と銀を寄せて固めるだけ
- 左銀を前線に回せるため、攻撃力を高めやすい
このように、攻守の切り替えがスムーズで、初心者でも実践投入しやすい囲いといえます。
また、金が中心の囲いなので金が簡単には取られにくく、崩れにくい構造をしています。
加えて、矢倉や美濃囲いと比べて、構築に必要な手数が短く、中盤以降の構想に早く移れるのも大きな利点です。
金無双のデメリット|斜めからの攻めに弱い
一方で、金無双は斜めからの攻撃や玉頭攻めに弱いという明確な弱点があります。
- 玉の逃げ道がやや狭い
- 角や銀の斜め攻めに対して脆い
- 相手が端攻めや角交換から狙ってくると崩れやすい
特に、角交換後の打ち込みに対応しづらく、中級者以上の相手にはその弱点を突かれることが多いです。
さらに、端が薄い構造のため、端攻めから一気に崩されることもあります。
他の囲いとの比較|金無双と穴熊・美濃・矢倉
囲い名 | 堅さ | 構築手数 | 攻撃力 | 弱点 |
金無双 | 中 | 短い | 高い | 斜め攻め、玉頭攻め |
美濃囲い | 中 | 中 | 中 | 横からの攻め、中央突破 |
矢倉囲い | 高 | 長い | 低い | 端攻め、囲いに時間がかかる |
穴熊囲い | 非常に高い | 非常に長い | 低~中 | 崩されたときに一気に終わる |
このように、金無双は「速攻型の振り飛車に向いている囲い」であり、持ち時間が短い早指しや将棋ウォーズの3切れなどでも活躍します。
金無双が向いている棋風と戦法タイプ
金無双は、特定の棋風や戦法との相性が良い囲いです。
このセクションでは、どのようなプレースタイルや戦法を好む人に金無双が向いているのかを解説します。
攻撃重視・スピード感を大切にする棋風にマッチ
金無双は、「囲いに手数をかけたくない」「早く攻めに移りたい」という攻撃的な棋風の人に向いている囲いです。
特に以下のような特徴のある人におすすめです。
- 振り飛車党で、中盤から一気に攻めたい人
- 序盤の時短重視で、囲いよりも攻撃布陣を優先したい人
- 将棋ウォーズのような早指し対局でスピードを求める人
矢倉や穴熊に比べると明らかに構築が早く、攻めとのバランスを取りやすいため、短期決戦で主導権を握る戦法との相性が抜群です。
振り飛車戦法との相性が良い|四間飛車・三間飛車など
金無双は、とくに振り飛車戦法と相性が良い囲いです。
- 四間飛車 → 左金を上がらず守りに残せる
- 三間飛車 → 中央・左翼を金で固めて右銀で攻撃に出られる
- 向かい飛車 → 急戦に備えつつバランスの良い囲いになる
振り飛車の最大の課題は「囲いに時間がかかること」ですが、金無双であれば短手数で一応の安全を確保しつつ、攻撃に専念できる布陣が作れるのです。
受け将棋・持久戦にはやや不向き
一方で、じっくり構えて守りを固めたいタイプの棋風には金無双はあまり向きません。
- 長期戦での耐久性が穴熊・矢倉に劣る
- 玉が中央寄りに位置するため、終盤に詰まされやすい
- 受けに回ると柔軟性に欠ける
したがって、カウンター型や受け将棋を好む人は、矢倉や穴熊などの堅陣の方が安定するでしょう。
金無双への対策と崩し方|知っておきたい急所
金無双は構築が早く、攻守のバランスに優れた囲いですが、守備力では他の囲いにやや劣る面もあり、急所を突かれると脆いです。
このセクションでは、金無双の典型的な崩し方と対策を解説します。
5筋の金を狙っていく
金無双では、左金が斜め上に配置されていることが多く、攻め込まれた際に逃げ場が少なくなりがちです。
とくに以下の筋が狙い目です。
- 6筋からの飛車交換+歩の連打
- 6筋に銀・桂で食い込む形
- 金の裏に回り込むような角打ち
これらの手筋は、金無双の構造的な弱点を突く典型例であり、攻め込まれた側が受け一方になる展開になりやすいです。
端攻めも有効|玉の逃げ道が狭い構造
金無双では玉が中央から端寄りにいく形が少なく、逃げ道が少ない囲いになりやすいのが特徴です。そのため、
- 1筋からの香・歩の連打
- 端角からの横利き
- 玉頭を狙った突き捨て→桂跳ね
といった端攻めが有効なケースも多く見られます。
特に対振り飛車での金無双採用時に、居飛車側が端攻めを狙うことが多く、事前に対応手を準備しておく必要があります。
中央突破にも要注意|玉の位置がバレやすい
金無双は組み上がりが早い反面、玉の位置が読みやすいため、中央からの突破攻撃にも注意が必要です。
以下のような手順に要警戒。
- 飛車先の交換後、5筋から角や銀を投入
- 玉の真上に歩を打ち込み、と金を作る
- 金の裏側に回るような後方支援の角・飛車打ち
このような展開になると、守りが薄いまま終盤戦に突入してしまうリスクが高くなります。
金無双を指すなら覚えておきたいポイントと注意点
金無双は組みやすく、初心者にも扱いやすい囲いですが、正しく運用しないと弱点を突かれやすい面もあります。
ここでは、金無双を実戦で使ううえでのポイントを解説します。
早囲いで攻めを優先するなら最適な選択肢
金無双の最大の利点は、「短手数で組み上がる」ことにあります。
穴熊や矢倉に比べて手数が少なく済むため、そのぶん攻めに回る時間を早められます。
特に、以下のようなケースでは金無双が効果的です。
- 相手が急戦系(早石田・右四間など)の布陣
- 中盤での駒捌き重視の戦型
- 終盤勝負で速度重視の囲いを求めるとき
攻守のバランスはやや薄めですが、素早く戦うスタイルのプレイヤーにとっては非常に合理的な囲いといえるでしょう。
金の位置取りと角の活用がカギ
金無双では、金2枚を横並びに配置するため、位置によって守備力が大きく変わります。
また、角の位置取りも玉を守るうえで重要です。
◆ポイント
- 左金を高めに配置しすぎると危険
- 玉はしっかり囲ってから無理に早逃げしない
- 角の利きが玉をカバーするようバランスを取る
このように、金無双の「見た目以上に繊細な構え」には、バランス感覚と駒の連携の理解が必須です。
相手の囲いに応じて柔軟に組み替える意識も必要
金無双は基本的にどの戦型にも使えますが、相手の囲いに応じた柔軟な対応も求められます。
例えば、
- 相手が矢倉や美濃囲いの場合は、飛車先突破や端攻めの準備
- 穴熊対策としては、玉頭を固める+攻め筋を明確に
- 対抗形では金無双+舟囲い風に組み替えるなどの変化も
囲いを固定的に考えず、「状況に応じて一部の形を崩す判断」ができるようになると、実戦での勝率もぐっと上がります。
金無双を学べるおすすめの本・動画まとめ
金無双は定跡書にあまり多く取り上げられていない囲いですが、YouTubeや一部書籍ではしっかりと解説されており、独学でも学びやすい戦法です。
ここでは初心者~中級者に役立つ学習教材をご紹介します。
初心者におすすめの書籍・定跡本
金無双を詳しく解説している書籍は限られていますが、以下のような書籍で基本的な囲いの考え方や指し方を学ぶことが可能です。
◆おすすめの書籍
「囲いの基本堅陣を築いて勝利を目指せ!」
「奇襲大全」
「将棋の教科書 振り飛車急戦」
これらの書籍では金無双単体の詳細は少ないですが、「囲いの意味」や「短手数での構築」の考え方を学ぶのに役立ちます。
YouTubeで学べる金無双の動画講座
動画で学びたい方には、YouTubeの将棋系チャンネルが非常におすすめです。
視覚的に金無双の構築手順や注意点を確認できるため、理解しやすくなります。
◆おすすめチャンネル
- 将棋放浪記【プロ棋士 渡辺和史四段】
金無双での対抗形戦を実戦形式で解説 - アゲアゲ将棋実況チャンネル
実戦での金無双採用例とその戦い方を実況 - 元奨励会員アユムの将棋実況
振り飛車側から見た金無双対策のポイントも学べる
動画で何度も視聴することで、組み方だけでなく戦い方のパターンも自然と身につきます。
プロの実戦例で金無双の使い方をチェック
金無双はプロの公式戦ではあまり多くは登場しませんが、一部の棋士が採用している例もあります。
◆代表的な金無双採用局面(例)
- 郷田真隆九段 vs 豊川孝弘七段(2000年代の実戦)
- プロ編入試験等の非公式戦でも使用例あり
実戦譜の中では、「なぜこの囲いを選んだのか?」「相手の狙いをどう受けるのか?」といった思考の流れを感じ取ることができます。
将棋ソフトや観る将アプリなどを活用すれば、棋譜並べをしながら学べるのでおすすめです。
まとめ|金無双は実戦向きの万能囲い
最後に、金無双の魅力を総括しつつ、今後の学び方についても触れていきます。
速攻戦や奇襲に強く、実戦で重宝される囲い
金無双は少ない手数で組めるという点で非常に実戦向きの囲いです。急戦、奇襲、速攻を好む棋風のプレイヤーにとっては、攻めのリズムを崩さずに守れる囲いとして最適。
また、相手に囲いを組ませないように自分から仕掛けられる展開を目指す際にも有効です。
他の囲いとの比較で理解が深まる
金無双だけでなく、矢倉・穴熊・美濃囲いなどと比較しながら学ぶことで、「どんなときに金無双がベストな選択肢なのか」が明確になります。
以下のような比較が理解を助けます。
囲い名 | 堅さ | 組みやすさ | 攻守バランス | 推奨局面 |
金無双 | △中〜やや弱 | ◎組みやすい | ◯バランス良し | 速攻、対振り飛車 |
美濃囲い | ◯中程度 | ◎組みやすい | △やや攻撃型 | 振り飛車向き |
矢倉 | ◎高 | △時間がかかる | ◎守備的 | 居飛車、持久戦 |
穴熊 | ◎最強クラス | ×構築に時間 | ◎守備特化 | 長期戦・防御重視 |
金無双の使いどころを見極めよう
金無双は万能な囲いではありません。
相手の囲いや戦型、戦術に応じて使い分けることが、勝率アップに直結します。
- 早仕掛けを狙うなら金無双
- 長期戦を見据えるなら他の囲いも視野に
- 相手が振り飛車なら金無双+舟囲いの融合も有効
実戦の中で試しながら、「自分の戦い方に合うかどうか」を見極めていきましょう。
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